薬膳を知るうえでまず「そもそもカロリー計算という概念がない」と言ったら
みなさんは驚くでしょうか。
薬膳とは、食べる人の体質やその時の体調に合った「効能・性質など」を持つ「食材」や
「味」をバランスよく、意識しながら選んで作る料理のことでした。
この考え方を“弁証施膳”と言い、五味五性(ごみごせい)を基本に組み立てていきます。
弁証施膳(べんしょうしぜん)
漢方の理論に基づいて、体質や症状、体調、季節などに合わせて(弁証)レシピをつくるオーダーメイトの食事(施膳)のこと
特に「味」は栄養学で、効果・効能に関して語られることはないですが、
古の知恵『漢方・薬膳』ではとても大切な概念なのです。
五味
五味とは「酸っぱい」「苦い」「甘い」「辛い」「塩辛い」という食材の
5つの味のことです。
下記のように、五味には、心と体に働きかける、それぞれの作用があると考えられています。
注意深いのは「五味」は必ずしもその味がするとは限らず、
あくまで、体や心へのの働きから五味を当てはめることもあります。
■五味とその働き
五味 | 代表的な作用 | 働き | どんな症状に効果的か | 食材例 |
酸味 | 収斂(しゅうれん)作用 | 筋肉を引き締め、汗や尿などが出すぎるのを止める | 汗かき 下痢 不正出血など | 梅 酢 桃 レモン とまと |
苦味 | 清熱作用など | 体の熱をさましし 便を出す | 便秘 発熱 目の充血 皮膚の赤みなど | にがうり うど 緑茶 にら 豆腐 |
甘味 | 緩和作用など | 滋養強壮 痛みをとめて緊張をゆるめる | 疲労倦怠など | なつめ 玄米 はちみつ だいず かぼちゃ ごはん |
辛味 | 発散作用 | 滞っているものを発散させて気血の流れをよくする | かぜ 消化不良 など | ねぎ しょうが にんにく だいこん シナモン |
鹹味 (塩味) | 潤下作用など | 固いものをやわらかくする 便通をよくする | 便秘 腫瘍 イボなど | くらげ かに のり 昆布 |
五性(四気+平性)
「四気」とは食材の性質「食性」をあらわします。
「陰」に属する「寒」「涼」と、「陽」に属する「温」「熱」という4つの性質を
あらわします。
また食材の性質がどちらでもなく作用が比較的穏やかなものを「平」とあらわします。
そしてこの「平」を入れた5つを「五性」とも呼びます。
つまり身体を
「温めるもの(熱/温)」→冷えを除いて体を温めて興奮作用があるもの。
「温めも冷やしもしないもの(平)」→どちらの特性でもなく体に優しく常食したいもの
「冷やすもの(涼/寒)」→熱を冷まして体を冷やし、鎮静作用があるもの
と分類します。
例えば【ダイエットをしたい冷え性タイプの女性】が
1つ約80カロリーの食材「たまねぎ(温)・じゃがいも(平)・バナナ(寒)」の中から、
どれか1つしか選べない場合はどうするでしょうか。
「カロリー」だけの視点で考えれば、どれを選んでも同じです。
しかし薬膳の視点で考えると、身体をあたためる性質の「たまねぎ」を選択します。
理由は、ダイエットのために脂肪を効率よく燃焼させ、体を冷やさないように保つためには、
新陳代謝を上げる事が大切だからです。
このようにして、目的や体調・季節に合わせて、体を冷やすのか温めるのかを考えるのです。
五味五性のまとめ
長い長い歴史の中で、食材を実際に食べ、体に与える影響を検証するといった、
人々の経験の積み重ねから生み出されたものです。
ですので、効能や働きは、資料文献によってデータが異なる場合があります。
しかしそれもまた、数値で表現することが出来ないからこそ、面白い点ではないでしょうか。
また効能は、副作用は極めて少ないものの、即効性が期待できるものではありません。
大切なことは意識して続けることで、体と心のバランスが整い、症状改善に役立つというこ
とを示しています。