しゃがんだり立ち上がったり、階段の上り下りなどのときに、膝から
「ポキポキ」
「コリコリ」
「ガリガリ」
という違和感のある音がしたことはありませんか。
音自体はいわゆる「指ポキポキ」と同じようですが、
膝から不穏な音が聞こえる人は、実は色んな症状のリスクが隠れている場合があるようです。
- 痛みが無くて時々鳴るだけ
- 痛みがあって常にポキポキ鳴る
と症状はさまざま。
いずれにしてもこの音は気になるところですね。
今回は膝がポキポキと鳴る考えられる原因や治し方について紹介していきます。
もくじ
膝の仕組み
膝を支えている骨は
- 大腿骨(だいたいこつ)
- 脛骨(けいこつ)
- 腓骨(ひこつ)
- 関節軟骨(かんせつなんこつ)
という4つの骨の接合部位で出来ています。

引用:リウマチ関節症センター白和病院
とくに関節軟骨は、弾力性があり柔らかいため
- 衝撃を和らげたり
- 関節の動きを滑らかにしたり
といった役割があります。
膝を守っているもの
また、図のように滑膜(かつまく)という、骨を包んでいる膜から分泌される関節液は
軟骨の成分の1つであるヒアルロン酸を含んだ液体で、
- 膝や関節がスムースに動く潤滑油
- 軟骨の栄養の役割
を果たしています。
そして、関節軟骨や関節液などもまた、クッションや潤滑油の役割を果たして、膝の滑らかな動きができるように調整されています。
変形性膝関節症とは
整形外科などで特に異常が見つけられないのに、不必要に膝がポキポキ鳴る症状で可能性が高いのがこの症状です。
といいます。
軟骨がだんだんと磨り減っていくことで、骨や関節包が刺激されて痛みを生じるようになります。
変形性膝関節症の原因
この症状になりやすい原因としては次のような人が考えられます。
O脚の人がなりやすい
変形性膝関節症になると、膝の痛みを感じる位置は
“膝の後ろ側・外側・内側“
など人によってさまざまあります。
特に日本人の場合はO脚(がに股)の人が多く、膝の内側の軟骨にダメージが集中するため
といわれ、膝の内側に痛みを感じるケースが多く見られます。
特に高齢者に多い症状
変形性膝関節症は、年齢とともに明らかに増加します。
中高年のひざの痛みの原因として、もっとも多いとされる変形性膝関節症。
日本の推定患者数は2530万人ともいわれていて、
日本人の5人に1人がその予備軍、
15人に1人が症状を感じているともいわれています。
女性が男性の2倍近く
ある一般の方を対象にした検査では
60才以上で女性の約40%、男性の約20%がレントゲン上、変形性膝関節症と診断されていて、どの年代でも、女性の割合が男性に比べて1.5~2倍多くなっています。
80才以上の人のひざを調べると、症状がなくてもほとんどの人に変形性膝関節症がみられるともいわれています。

引用元:リッチボーン-関節痛-
また、レントゲン上で変形性ひざ関節症の所見がある人のうち約80%の人は、
- ひざの痛み
- 腫れ
といった「自覚症状が無い」という結果もあります。
変形性膝関節症状の特徴
特徴はどのようなものがあるか進行具合を確認してみます。
初期段階
初期の変形性膝関節症では、軽度の関節軟骨の磨耗が生じますが、自覚的な症状はほとんどありません。

引用元:リッチボーン-関節痛-
中期~末期段階
歩きはじめなど動作の開始時のみに痛みが生じ、だんだんと正座や階段の昇降が困難となります。
末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。

引用元:リッチボーン-関節痛-
変形性膝関節症の予防
関節軟骨は再生しにくく、一度すり減ってしまうと元通りの状態に戻すことは困難です。
ですから、日常生活においてなるべく膝に負担をかけないような心がけが必要になってきます。
- ふとももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える
- 正座をさける
- 肥満であれば減量する
- 膝をクーラーなどで冷やさず、温めて血行を良くする
- 洋式トイレを使用する
-日本整形外科学会-「変形性膝関節症」予防と治療より
以上のことなどが挙げられます。
また、痛みがあるからと安静に過ごすばかりでは、その部分の筋力が低下し関節が固まってしまうため、痛みはさらに増してしまいます。
できるだけ痛みを生じないように注意しながら、膝関節の周りの筋肉を適度に動かすよう心がけましょう。

引用元:日本整形外科学会「変形性膝関節症」予防と治療より
変形性膝関節症のセルフチェック
このように、初期段階では自覚症状が無い方が多いため、気が付いたら進行している場合もあります。
自分で早期発見・早期治療ができるようにぜひこちらのチェック表も参考にしてください。
- たちあがり・歩きはじめに膝がこわばる
- 特に、坂道・階段の上り下りで違和感がある
- 膝を曲げた時にポキポキという音は無いが、手をあてて屈伸するとゴリゴリ感じる
- トイレでのしゃがみ・正座・中腰が辛い
- 膝の後ろに張りを感じる
- 膝の前や後ろが腫れて熱を持つ
- 膝のお皿を押すと浮いた感じがする
-リウマチ関節症センター白和病院より抜粋-
以上をチェックして、2つ以上該当するようでしたら、専門医の受診をおすすめします。
変形性膝関節症の治療
変形性膝関節症は、症状が軽い場合は
- 痛み止めの内服薬や外用薬
- 膝関節内にヒアルロン酸の注射
などをします。
場合によっては、病院でリハビリテーションを行ったり、膝を温めたりする物理療法を行います。
膝の負担が少ない
- 「ウォーキング」
- 「水中運動」
などは特に膝にあまり負担がかからないのでおすすめです。
適度な運動を継続して行うことで、筋力、体力、柔軟性といった身体機能を高め、膝を強くして負担を減らしたり肥満やストレスを解消することで痛みの解消・予防を図ります。
このような治療でも治らない場合は手術治療も検討することがあります。
関節液の音でポキポキ
膝がポキポキとなる原因には他にどのようなものがあるのでしょうか。

引用:リウマチ関節症センター白和病院
「指ポキポキ」と同じ原理で、
関節液の中に気泡ができることで、膝を曲げる時にこの気泡がはじけるとポキポキと音が鳴ることがあります。
弾けた気泡は、時間がたつとまた元に戻るのでまた鳴らせる状態になるのはそのためです。
気泡がポキポキの原因は
関節液の中に気泡ができる原因は諸説ありますが、
主に加齢や運動不足などが原因で関節がゆるんでいる場合が多いと言われています。
痛みがなければ基本的に心配はいりませんが、一日に10回以上鳴らす人は関節に炎症を起こす場合があるので、鳴らし過ぎには注意しましょう。
膝蓋骨付近がポキポキ
膝の中心といえば
は、膝の前面を保護していて
「膝のお皿」
とも呼ばれ、
丸みを帯びた逆三角形の形をしています。

引用:Wikipedia
【膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)】
膝の関節(膝のお皿)がズレてゴリゴリ音
【タナ障害】
膝蓋骨(膝のお皿)と大腿骨(太ももの骨)の内側の間にある膜に炎症が起きて「パキッ」
なども膝付近で不穏な音が鳴る原因になります。
まとめ
いずれにしても、膝のポキポキ音とともに痛みが伴う場合は、膝関節のどこかで炎症を起こしていると考えられます。
変形性膝関節症は徐々に進行していくため、原因がわからないまま市販の湿布薬などで対処してしまうことで、
受診しないまま、痛みのためにだんだん歩かなくなる
↓
気が付くと筋力が落ちて体重が増える
といった悪循環を招くこともあります。
すぐに受診できない場合は膝に負担がかからないようサポーターなどで保護し、炎症が悪化しないように注意してくださいね。
日ごろから、適度な運動や食生活の見直しを行い、自己判断せずに整形外科などを早めに受診することが大切です。