食欲の秋、ついつい食べ過ぎ、飲み過ぎの日々が続くことも多いのではないでしょうか。
冬に向かう時期に一番気をつけたいのは、毎年12月ごろに流行のピークを迎える感染性胃腸炎です。
特に大人がかかる原因となるのは
ノロウイルス
人から人にもうつる感染力の強いウイルスです。
どのような症状や対策などお伝えしたいと思います。
もくじ
感染性胃腸炎とは
感染性胃腸炎は、俗称で『胃腸風邪』ともいわれます。
さまざまな病原体が原因で引き起こす胃腸炎の総称です。
食中毒の原因ともなるこれらの病原体は、夏場は細菌や寄生虫が多いのに対して、
冬場に多いのはウイルスです。
感染性胃腸炎の病原体の種類
病原体は主に次の3つがあります。
細菌性…腸炎ビブリオ、病原性大腸菌(o157など)、サルモネラ、カンピロバクタなど
ウイルス性…ノロウイルス 、ロタウイルス、アデノウイルスなど
寄生虫…クリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫など
国立感染研究所-感染性胃腸炎の病原体-
ですから、冬場に流行する感染性胃腸炎は、
「ウイルス性胃腸炎」
「流行性嘔吐下痢症」
ともいわれます。
感染性胃腸炎と急性胃腸炎の違い
しばしば聞かれる「急性胃腸炎」とはどのような違いがあるのでしょうか。
・原因ががはっきりしているのか
・人に感染させるものかどうか
などで判断されるようです。
【感染性胃腸炎】
ウイルスや細菌、寄生虫が原因とはっきり判断されるもの。その時期に主に流行しているもの(ノロウイルスやロタウイルス、食中毒が感染性胃腸炎になります)
【急性胃腸炎】
“急性”と名の付く通り、突然の嘔吐や下痢を伴う病気で一過性のもの。
原因の病原体は感染性胃腸炎と同じか、または不明、感染力のない化学物質やアレルギーなども含む。症状の個人差が大きく、感染性胃腸炎と見分けがつきにくいこともある。
感染性胃腸炎の主な原因ウイルスは
さきほどお話ししたように、感染性胃腸炎の原因ウイルスとなるのは主に
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- アデノウイルス
の3種類です。
ロタウイルス、アデノウイルスによる胃腸炎は、赤ちゃんや子供に多くみられるのに対して、
大人の感染性胃腸炎といえばほぼノロウイルスによるものです。
ですから、特に秋~冬にかけて大人がかかるのは
感染性胃腸炎=ノロウイルスによる感染症
と言えます。
ノロウイルスが強力な理由
ノロウイルスは大きさが約30nm(nm/ナノメートル=1mmの百万分の一)で、ウイルスの中でも非常に小さなウイルスです。
大きさが約100nmのインフルエンザウイルスと比べても、約3分の1の大きさです。
- ウイルスが少量(10から100個程度)でも感染することがある
- 食品からだけでなく、人から人、環境(空気中)から人へ感染が極めて強力
- 増殖能力スピードが異常に早い、食品中では増殖せず、人の腸管内でのみで増殖する
という特徴があることから、感染力が非常に高いウイルスです。
感染性胃腸炎(ノロウイルス)の潜伏期間・症状
ノロウイルスに感染するとどのような症状を引き起こすのでしょうか。
潜伏期間
感染から発症までは約24-48時間
おもな症状
感染性胃腸炎の主な症状としては
主症状は吐き気、嘔吐、下痢、腹痛であり、発熱は軽度です。…これら症状が1~2日続いた後、治癒し後遺症もありません。また、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状の場合もあります 厚生労働省-ノロウイルス感染症-
下痢は水様性で、重症の場合は1日に十数回もトイレに駆け込むこともありますが、通常は2〜3回で回復に向かいます。
その他の症状としては、筋肉痛、頭痛などが見られますが、いずれも後遺症が残ることはありません。
症状には個人差があるので、嘔吐、下痢は無く微熱だけの人もいれば、
[体の免疫力・抵抗力が強い人]は感染しても発症しない人もいます。感染性胃腸炎(ノロウイルス)の感染経路
ノロウイルスは非常に感染力が強いウイルス。人から人にも感染します。
食品からの感染
・ノロウイルスに感染した人が調理したものを、他の人が食べて感染
・ノロウイルスの蓄積が多いとされる加熱不十分な二枚貝(牡蠣・あさり)など
人からの感染
・感染者の便やおう吐物から感染
・家庭や施設内などで、空気中に飛沫(飛び散ること)による感染
感染性胃腸炎(ノロウイルス)になったら
お腹がゴロゴロとなってしまうのはいくつか理由が考えられます。
- お腹がすいてるとき
- おなかにガス(空気)が溜まっているとき(呑気症)
- 食べものが胃や腸で消化しているとき
- 下痢気味のとき
- 筋肉が痙攣するとき
などがありますが、
感染性胃腸炎で胃腸が炎症し、下痢や嘔吐がひどいときは、食べてもすぐに体外へ排出されるため、少しずつ様子をみながら摂取する必要があります。
これを繰り返すと特に体力の弱い方や、小さいお子さん、高齢者は、脱水症状を起こしやすくなるので、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。
脱水症状がひどい場合には、病院で点滴を行うなどの治療も必要になります。
大事な水分補給
水分も一度にガブガブとるのではなく、少しずつこまめにとっていきます。
冷たすぎるものは胃に負担がかかってしまいます。
- ミネラルウォーター
- 経口補水液
- スポーツドリンク
- 白湯
これらを常温で飲む方が胃に優しく体に吸収されやすくなります。
スポーツドリンクは水分補給に大切な塩分を適度に含んでいますが、糖分もその分高めです。
日ごろ高血糖の人は飲み過ぎてはいけないこともあるので、注意が必要です。
下痢や嘔吐の症状が治まれば、おかゆやすりおろしたリンゴなど消化にいい物を少しずつ食べましょう。
避けた方がよい飲み物
ノロウイルスにかかっているときは胃腸の機能も弱まっているため、「刺激になる飲み物」は逆に避けなければいけません。
- 炭酸飲料
- コーヒー
- お茶(緑茶・ウーロン茶など)
- お酒
- 柑橘類のジュース
- 辛いスープ
- 冷たい飲み物
コーヒーやお茶などにふくまれる「カフェイン」は胃が荒れやすく利尿作用を伴います。
そのため必要な栄養と水分が体から出てしまうので控えましょう。
お茶の場合は、麦茶・ルイボスティーなどノンカフェインの体に優しいお茶がおすすめです。
体が弱っているときは、柑橘系のジュースや冷たいものでスッキリとしたいところですが、刺激が強く下痢を悪化させる可能性があります。
下痢止め・吐き気止め薬は極力NG
ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤は、今のところありません。
Q) 発症した場合の治療法は?
A) 現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。…特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。…下痢止め薬は、病気の回復を遅らせることがあるので使用しないことが望ましいでしょう
厚生労働省-ノロウイルスQ&A-
下痢や嘔吐の症状がひどくて、下痢止めや吐き気止めなどを服用したくなると思います。
しかしまずは病原体であるノロウイルスという毒素を、体外に排出しないといけません。
お風呂に入るときの注意点
感染している人がお風呂で湯船につかる前には、まずウイルスが一番ついているおしりをよく洗い、他の家族との混浴は避け、入浴は一番最後にします。
お風呂の水は毎日かえて、浴槽や風呂の床、洗面器、椅子なども清潔に掃除を。
タオルやバスタオルの共有も避けるようにします。
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まとめ
ノロウイルスは非常に感染力が強く、一度かかっても何度も発症する可能性もあります。
下痢が止まらない時は無理をして食事はとらず、とにかく胃腸に負担の少ない飲み物で水分補給をこころがけましょう。
また、下痢等の症状がなくなっても、長いときは1ヶ月ほどは体からウイルスの排出は続くことがあります。
症状が改善した後でも、手洗いうがい、マスク着用などまわりにうつさないように配慮することも大切です。
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