「肺炎」といっても原因は
- 細菌
- ウイルス
- 寄生虫
などさまざま。
これらの病原体が肺にまで入り込むことで引き起る肺の炎症です。
マイコプラズマは、
“肺炎の10~20%程度がマイコプラズマが原因によって起こる”
ともいわれていて、身近にある病原体のひとつです。
マイコプラズマ肺炎は子供がかかりやすい病気とされていますが、大人でも感染します。
しかも、大人は感染すると重症化して肺炎を起こしやすい傾向にあります。
- 大人が発症した時の特徴
- マイコプラズマ病原菌の特徴
- 潜伏期間や感染経路
など解説したいと思います。
もくじ
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は、正式には
という名前の微生物よって引き起こされる肺炎です。
ウイルスよりも大きく、細菌より小さい病原体でその構造はとても特殊です。

引用:ウィキペディア(マイコプラズマ属 大きさ200-300nm)
ウイルスと細菌の違い
わたしたちがよく知っている代表的な病原体に「ウイルス」と「細菌」がありますね。
この二つの大きな違いは何なのでしょうか。
細菌 | ウイルス | |
特徴 | 細胞もった単細胞生物。生きた細胞がなくても自分自身で増殖 | 単独で生存できないため人などの細胞の中に寄生して増殖 |
治療 | 抗菌薬で治療 | 一般的な抗菌薬で治療できない |
大きさの単位 | 1mmの1/1000の単位【μm(マイクロメートル)】 | μmの更に1/1000の単位【nm(ナノメートル)】 |
マイコプラズマはどちらでもない?!
マイコプラズマは、ウイルスと細菌の中間的な病原体となっています。
なぜならマイコプラズマは、細菌に分類されているにもかかわらず、ウイルスに近いほど小さい病原体で、菌類に特徴的な外側に細胞の壁がなく、一定の形をしていません。
ウイルスはヒトの細胞の中でしか増えませんが、マイコプラズマは栄養があればヒトの細胞外でも増えていきます。
ですから、環境のなかにどこでもいる細菌の一つです。
このことからマイコプラズマ病原体に有効な抗菌薬も、ごく限られたものに限定されます。
(具体的にはマクロライド系、ニューキノロン系という種類の抗菌薬が選ばれます)
しかし近年は、通常使用されるマクロライド系という抗菌薬さえ効かない、
「耐性菌」
の増加が大きな問題となっていて対応が急がれています。
マイコプラズマ肺炎・大人の感染経路
マイコプラズマ肺炎の患者は、14歳以下の子供が約8割ですが大人でも発症します。
大人が感染するケースとしては、多くは小さなお子さんからの二次感染です。
保育園・幼稚園・小中学校に通うお子さんが感染し、家庭内に病原体が持ち込まれるというケースがみられます。
感染経路としては次の2パターンです。
【飛沫感染】
感染した人の咳・痰・くしゃみなどによって病原菌が飛散し、それを吸い込むことで感染する
【接触感染】
感染している患者との直接的な接触や、周囲の物を介しての間接的な接触で病原菌が体内に入る
関連 マイコプラズマ肺炎になったら大人は休める?再発や完治期間は
マイコプラズマは潜伏期間が長い
マイコプラズマの病原体が怖いところは、潜伏期間が長いことです。
潜伏期は通常2~3週間で、初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。
咳は初発症状出現後3~5日から始まることが多く、当初は乾性の咳であるが、経過に従い咳は徐々に強くなり、解熱後も長く続く(3~4週間)
国立感染研究所-マイコプラズマ肺炎とは-
このように、感染から発症まで
2~3週間
とも言われているので、感染者は潜伏期間中も、気が付かずに病原体を体から排出しているということです。
そしていったんかかってしまうと、長い時には1~2か月以上も完治にかかるともいわれています。
大人の症状は、子供のマイコプラズマ肺炎とほぼ同じですが、大人のマイコプラズマ肺炎には特徴的な点もいくつかあります。
マイコプラズマ肺炎・大人の初期症状
マイコプラズマ肺炎の初期症状としては
- 咳
- のどの痛み
- 頭痛
- 全身の倦怠感
などほとんど風邪の症状と変わりません。
インフルエンザなどの高熱が出ないため「微熱と咳が続く風邪」と思われがちで、そのまま適切な治療をしないまま長引くケースが多くなってしまいます。
特徴1)自覚症状があまりない
微熱や咳、身体のだるさが長く続くことがあります。
しばらくすると微熱から38~39度の熱になることもありますが、
弛張熱といって、1日の中で高熱と熱の無い状態が交互に現れる現象も見られます。
特徴2)痰がからむ湿った咳
マイコプラズマ肺炎の症状でいちばん特徴的なものに、痰のからまない乾いた咳があります。
この咳は熱が下がっても長引くケースが多く、大人の場合は乾いた咳から気道の炎症により分泌物が増すことで、痰がからむ湿った咳が長期間続くのも特徴です。
夜間や早朝に急に咳がひどくなって、眠れないほど苦しむこともあるようです。
特徴3)症状が重くなりやすい
大人(特に高齢者の方)は、重症化するリスクが高いのもマイコプラズマ肺炎の特徴です。
- 胸に水が溜まる「胸水貯留」
- 呼吸不全
などを引き起こす場合もあり、ときに入院が必要となります。
逆に幼小児期では喉や軽い咳などの上気道炎症状にとどまり、肺炎にならないことが多い・・・
マイコプラズマ肺炎は、低年齢ほど軽く済む傾向があります(RSウイルスと逆です)
マイコプラズマ肺炎は自然治癒できる?
マイコプラズマ肺炎について“自然治癒”できるのかどうか、という点も気になるところだと思います。
国立感染研究所や厚生労働省の案内では、その点についての記述は見つけられませんでしたが、
いくつかの感染症・アレルギー専門の病院のホームページでは次のような共通の見解がありました。
マイコプラズマ肺炎は、基本的には3週間程度で自然治癒しますが、一部劇症化する場合もあります。
㈳浅草クリニックホームページ“マイコプラズマについて”
“劇症化“するとはつまり重症化するという意味です。
マイコプラズマ肺炎は
- 無菌性髄膜炎
- 脳炎
- 肝炎
- 中耳炎
などといった、肺以外の重い合併症を引き起こすこともがあるので注意が必要です。
ですから、よっぽどの軽症でない限りは、過信せず早めに医師の指示を仰いだほうがよいでしょう。
関連 マイコプラズマ肺炎で熱が下がらない!気をつけたい合併症は
マイコプラズマ肺炎の対処法
感染後の対処法としては、基本的に子供も大人も、水分や栄養補給に気をつけて安静にすることが大切です。
病院では、咳や鼻水、鼻づまりに対しては、それぞれにあった対処療法の薬が処方されます。
病原菌に対する抗生物質を使った治療法も行われることもあります。
マイコプラズマ肺炎になったら出勤はできる?
マイコプラズマ感染症には明確な出勤停止期間は設けられていません。
しかし、症状が和らいでも飛沫感染を引き起こす可能性は残っています。
- 咳が出る間は必ずマスクを着用
- 処方された抗生剤はしっかり飲み切る
など、感染をひろげないためにも周りへの配慮が必要です。
マイコプラズマ肺炎の予防法
マイコプラズマ肺炎を予防するには、風邪予防と同じように感染者との接触はなるべく避け、
- 手洗い
- うがい
を心掛けたいものです。
マイコプラズマ感染症の毎年のピークは秋から冬にかけてですが、一年を通して発症する可能性はあります。
流行時期は特に特に人ごみをさけ、マスク着用は心掛けるようにしたいですね。
まとめ
マイコプラズマ肺炎の症状は、風邪の初期症状と大変よく似ているため、病院へ行かずに自己判断で様子をみてしまうことが良くあります。
- 市販の風邪薬などで症状が治まらない
- いつもの風邪とは違う乾いた咳
- 咳がずっと止まらない
このような場合はマイコプラズマ肺炎が疑われますので、重症化しないうちに医師の診断を受けるようにしましょう。
潜伏期間も2~3週間と長いので、その間に他の人に感染させてしまう影響もあります。
これからの季節、インフルエンザなども流行しやすい時期です。
普段から手洗いうがい・マスク着用など、予防を心掛けながら感染から身を守るようにしていきたいですね。
マイコプラズマにかかっているかどうか、今は簡単に確認も出来るようになっています。
こちらの記事もお役に立ちます↓