多くの子供たちが夏場にかかりやすい感染症に
- 手足口病
- ヘルパンギーナ
- 咽頭結膜熱(プール熱)
があります。
この3つの病気を総称して
「こどもの3大夏風邪」
とも呼ばれますが、これらは夏だけではなく、大人にも感染します。
そして子供より大人の方が症状が重くなるものもあるので注意が必要です。
その中でも咽頭結膜熱(プール熱)は、春・秋・冬の1年を通して、小規模な流行がみられる感染症の一つ。
- 原因ウイルスの特徴
- 大人が感染するとどうなるの
- 感染経路や予防
など紹介したいと思います。
咽頭結膜熱(プール熱)とは
咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ・pharyngoconjunctival fever, PCF)は
- 発熱(高熱39℃前後)
- 咽頭炎 (のどの腫れや痛み)
- 眼の症状 (目の充血やめやに)
を主とする5歳以下の子供に多いウイルス性感染症で、原因のほとんどが
という種類のウイルスによります。
子供がプールを介して感染することがあるため「プール熱」ともいわれるようになりました。
アデノウイルスとは
プール熱の原因とされるアデノウイルスは、50種類以上もの「型」があるとされていてます。その種類によって
- 咽頭結膜熱(プール熱)
だけではなく、さまざまな体の疾患症状を引き起こします。
アデノウイルス・大人の症状の特徴
アデノウイルスに感染すると、子どもの場合は、「咽頭結膜熱」や「流行性角結膜炎」がほとんどですが、大人の場合は、
- 呼吸器疾患
- 眼疾患
- 消化器疾患
- 泌尿器疾患
など多岐にわたるとされています。具体的な病名はこちらです。
咽頭結膜熱(プール熱) | 39度前後の高熱、結膜炎、のどの痛み |
流行性角結膜炎(はやり目) | 目の充血、目やに、涙目、目の痛み、耳の前のリンパの腫れ |
扁桃炎 | 高熱、のどの痛み、扁桃に膿が付く |
胃腸炎 | 腹痛、下痢、嘔吐 |
上気道炎・気管支炎 | 発熱、鼻水、咳、のどの痛みなど |
肺炎 | 髄膜炎、脳炎などの併発もある |
出血性膀胱炎 | 下腹部痛、血尿、頻尿、排尿痛、残尿感 |
咽頭結膜熱(プール熱)の初期症状
子供がかかりやすいとされていますが、大人にも発症する可能性があり、
症状は大人も子供もさほど違いはないと考えられています。
咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)という病名からわかるとおり
・「咽頭炎」…口、鼻の奥部分の腫れや炎症
・「結膜炎」…目の腫れや炎症
が三大主症状とされています。
どれか一つの症状だけが出る場合もあれば、三つの症状がすべて重なる場合もあります。
また、熱が出てから喉の痛みや結膜炎が出たりと、症状の出方や程度には個人差があります。
加えて、
・結膜炎による目の充血や眼痛
・発熱による頭痛や食欲不振
・リンパの腫れ
・腹痛
・下痢
などの症状を伴うこともあります。
目に特徴的な症状
病原体のアデノウイルスは、特に目に起こる結膜炎に特徴があります。
「眼症状は一般的に片方から始まり、その後他方にも出現する。また、結膜の炎症は下眼瞼結膜に強く、上眼瞼結膜には弱いとされる。眼に永続的な障害を残すことは通常はない」
-国立感染研究所-咽頭結膜熱とは-
「白目の充血や目やにといった目の症状は流行性角結膜炎より弱い反面、のどの痛みや39度前後の発熱などの呼吸器系の症状がみられます」
-日本眼科学会-ウイルス性結膜炎(咽頭結膜熱)-
つまり、咽頭結膜熱のアデノウイルスは
- 片方の目から異常を感じる
- とくに上まぶたより下まぶたの方が充血しやすい
- 目やにが出る
といった症状が特徴的なようです。
重症化しやすい場合は?
多くの場合、発症してから3~5日程度症状が続くとされていますが、約1~2週間で自然に改善に向かうといわれています。
しかし、
- 心肺機能や免疫機能の低下といった基礎疾患のある人
- 高齢の人
などは、アデノウイルスの型によっては「呼吸障害」や細菌の二次感染などを引き起し、重症化することもあるといわれていますので注意が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)の感染経路&潜伏期間
国立感染研究所によると、プール熱の潜伏期間は5~7日、のち3~5日間主症状が現れます。
しかし症状が治まった後も、
- 咽頭(のど)から2週間
- 便から30日間
程度はウイルスを体から排出し続けるといわれていますので、注意が必要です。
感染経路
咽頭結膜熱は「プール熱」と言われるように、感染者がプールに入ることで汚染された「水」を介してうつるとされています。
しかし、実際のところは特に大人に対しては
「眼にもAd(アデノウイルス)は感染し、汚染されたタオル、手指あるいは水などにより感染すると考えられている」-国立感染研究所・アデノウイルスの感染経路-
というように、
- 飛沫感染
- 接触感染
による感染が主に原因とされています。
飛沫(ひまつ)感染
プール熱に感染した人が咳やくしゃみをして飛散する唾液や鼻水などになどにウイルスが含まれてるので、それを吸い込むことで感染すること
接触感染
ウイルスが付着している洋服や感染者に触れたりすることでウイルスが体内に侵入してしまうこと。
また、感染者が触れたドアノブやパソコンなどモノを通して二次的に感染することを言います。
大人の場合は特に、プール熱に感染した子供の看病をすることで、直接肌が接触する機会が増えるため、看病から感染する事例がほとんどといわれています。
咽頭結膜熱(プール熱)の治療・予防
プール熱の原因であるアデノウイルスには、今のところ有効とされる特別な治療法はありません。
しかし目の症状が強い場合は、眼科的治療が必要になることもあります。
予防としては、
- 石けんによる手洗い
- うがい
- マスク着用
- タオルや洗面器などを共有しない
- 目やにや涙を拭き取る場合は、ティッシュペーパーなどを使い、眼を直接手で触れないようする
のほか、手のアルコール消毒剤はより広範囲のウイルスに効果があるものを選ぶ必要があります。
なぜなら、ウイルスの構造には
- 「エンベロープウイルス」
- 「ノンエンベロープウイルス」
といって「エンベロープ=膜」があるものと無いものとに二分されていて、
咽頭結膜熱のアデノウイルスは抵抗性の強い「ノンエンベロープウイルス」だからです。
ウイルスの構造や市販の消毒液を選ぶポイントはこちらの記事がお役に立ちます↓
まとめ
アデノウイルスは非常に強い感染力を持つウイルスで、接触感染や飛沫感染で簡単に発症してしまいます。
とくに大人は子どもの看病から感染することが多いので、看病する際には、二次感染の対策はしっかり行いましょう。
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