咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)は、子どもが学校のプールの水を介してヒトからヒトへ流行が拡大することが多いため、別名「プール熱」とも呼ばれています。
主に毎年6月末~夏にかけて流行しますが、感染経路はプールだけではないため一年を通して発生します。
神奈川県衛生研究所によると
21歳以上の発症が全体の約8%
との報告もあり、大人でも発症のリスクがある病気です。
- 大人から大人にもうつる理由
- 学校や会社は休める?
- 治療や薬は
など確認したいと思います。
もくじ
咽頭結膜熱(プール熱)の症状は
咽頭結膜熱(プール熱)の潜伏期間は5~7日、その後
・「咽頭炎」…口、鼻の奥部分の腫れや炎症
・「結膜炎」…目の腫れや炎症
が三大主症状といわれ、3~5日間続きます。
頭痛をはじめ、食欲不振など3〜7日続くこともあり、特に眼の症状としては、
- 目が充血
- 目やに
- 涙が多くなる
- まぶしがる
などの症状がでることがあります。
咽頭結膜熱(プール熱)のアデノウイルスとは
咽頭結膜熱の病原体であるアデノウイルスは1種類だけではなく50種類以上の「型」があると言われていて、それぞれ違う特徴を持つことから、型によって現れる症状が違うといわれています
ですから、咽頭結膜熱はアデノウイルスが引き起こす症状の一つにすぎません。
他には、
- 流行性角結膜炎(はやりめ)
- 扁桃炎
- 胃腸炎
- 肺炎
などさまざまな体の疾患を引き起こす、感染力の強いウイルスです。
咽頭結膜熱(プール熱)の感染経路
プール熱は、「水」だけではなく
咳やくしゃみなどを介してウイルスが飛び散ることで周りに感染
ウイルスが付着している洋服や肌に触れることで感染
などがあり、特に大人は感染者の子供を看病する際、直接肌が接触する機会が多いため看病から感染する事例が多いです。
また、排泄物にウイルスが潜んでいることもあり、トイレの後の手洗いが不十分だったり、子供のおむつ替えなどで親が感染する「糞口(ふんこう)感染」もあるといわれています。
大人同士も感染する
アデノウイルスは子供だけではなく大人同士も感染する可能性はあります。
また、症状が良くなったと言っても、
- 咽頭(のど)から2週間
- 便から30日間
程度はウイルスが体から排出し続けるといわれていますので、登校や出勤などする際は必ずマスクの着用など周りへの配慮が大切です。
咽頭結膜熱(プール熱)は何科に行く?検査・診断方法は
アデノウイルス感染症はその他の感染症との区別がつきにくいこともあるので、詳しく検査されることがあります。
行われる主な検査は「迅速検査」と「血液検査」です。
迅速検査
一番早くて簡単なので、一般的に行われる検査です。
綿棒で鼻やのどの奥をこすり、粘膜を採取してウイルスがいるかを見る検査で、約15分~30分で結果が出るといわれています。
検査の正確さは100%ではない
しかし、発熱症状が現れた直後は、プール熱であっても陽性反応が出ないケースもあるため検査結果は100%正確ではありません。
また、アデノウイルスがいるという検査結果であっても、結膜炎などの「目の症状」がなければ「プール熱」ではなく、同じアデノウイルスが原因の別症状「咽頭炎」と診断されることもあります。
血液検査
血液検査は、迅速検査のようにすぐに検査結果がわからず、数日時間がかかります。
肺炎などの合併症を引き起こしていないかを確かめたりする場合にこの検査を行うことが多いといわれています。
検査方法としては、血液の採取は期間をあけて2回行い、1回目と2回目の数値を比較して抗体が上昇していれば「プール熱」と判断されます。
咽頭結膜熱(プール熱)の治療は
咽頭結膜熱(プール熱)に対しての特効薬はいまだ開発されていないため、現れた症状ごとにやわらげる対症療法が中心となります。
高熱をやわらげる
38~39度の高熱は5日ほど続くとされています。
痛みを感じる場合は、解熱鎮痛剤作用のある内服薬や座薬を用いて、症状を改善させていきます。
喉の痛みをやわらげる
のどの炎症を押さえる抗炎症剤を使用します。3〜7日ほど続くとされています。
目の痛みをやわらげる
目の症状は7〜10日ほど続くとされています。
目の炎症については、対症療法と併用して別途眼科医による治療が必要になります。
目の充血や目やになどの症状が多いときには、炎症を抑える効果があるステロイド剤の目薬や、細菌による二次感染の可能性がある場合は、抗生物質が有効とされています。
脱水症状を防ぐ
高熱により、脱水症状になりやすい状態になります。こまめな水分補給を行い、脱水症状を引き起こさないように気をつけましょう。
場合によっては点滴治療もあります。
食欲低下を防ぐ
また、のどの痛みを起こすこともあるため、食欲不振になることがあります。
オレンジジュースなどのような柑橘系の飲み物や炭酸など刺激のあるものは避け、麦茶や牛乳、冷めたスープなど、のどごしの良い少し冷たい飲みものがおすすめです。
食べものは、ゼリーやプリン、冷めたおじや、豆腐など、刺激が少なくかまずに飲み込めるものにしましょう。
体調が回復すれば、うどん、おかゆなど消化の良いものを摂るのもよいでしょう。
咽頭結膜熱(プール熱)になったら学校や会社は
咽頭結膜熱(プール熱)は、文部科学省が定める「学校伝染病第2種」に指定されている伝染病です。
学校伝染病第2種とは
学校伝染病第2種とは「飛沫感染しやすく、学校内で流行する可能性が高い伝染病」のことで、プール熱のほか、
- おたふくかぜ
- はしか
- 水ぼうそう
などが指定されています。
学校安全法では、第二種伝染病に位置づけられており、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止とされている。ただし、病状により伝染の恐れがないと認められたときはこの限りではない。-国立感染研究所-咽頭結膜熱の学校保健法に取扱い-
プール熱にかかると、高熱が治まり、のどの痛みや結膜炎の症状が消えた後、2日経過するまで出席はできません。
プール熱と診断されたらすぐに学校に届け出て、「傷病証明書」を受け取りましょう。
決められた出席停止期間にしたがって、ドクターの「登校許可」の証明が出るまで家で安静に過ごす必要があります。
この間、欠席扱いにはなりません。病気やケガ、事故、私用といった通常の欠席ではなく、学級閉鎖や忌引と同じ扱いになります。
大人の場合出勤は
社会人の場合は、子どものように明確な出勤停止期間はありません。
しかしアデノウイルスは感染力が強いため、お医者さんに「出勤はしばらく控えるように」と言われることがほとんどだと思います。
この時は「診断書」をもらって、会社に提出すれば何の問題もないでしょう。どのような欠勤の扱いになるかは会社によります。
大体、プール熱の症状は1週間すると治まってきますので、
「プール熱になってしまって1週間は出勤できないかもしれません」
と事前に伝えておくと職場の混乱も少ないですね。
やむを得ず外出する場合は、マスクを身につけ、うがいや手洗いを徹底するなど、感染が拡大しないよう気をつける必要があります。
今は体力を回復させて、しっかり治すようにしましょう。
咽頭結膜熱(プール熱)の予防法
咽頭結膜熱(プール熱)の予防としては、咳やくしゃみにによる飛沫感染、感染者との直接的な接触やモノを介した接触感染などの感染経路からウイルスの侵入を防ぐ必要があります。
こまめな手洗いとうがい
風邪やインフルエンザなどに有効といわれている基本的な予防法ですが、アデノウイルスの侵入を防ぐのにも効果が期待できます。
感染者とものを共用しない
タオルや食器、触ったドアノブなど、身近なものを共用することで間接的に感染してしまうリスクがあります。
感染者の症状が出ている間はだけでなく、症状が落ち着いていても2週間以上は共用を避けましょう。
消毒をする
塩素消毒が効果的といわれています。
アデノウイルスは温度に弱いウイルスなので、器具であれば煮沸消毒も有効とされています。
まとめ
咽頭結膜熱(プール熱)の原因となるアデノウイルスは、50種類以上の「型」があるため、さまざまな症状を引き起こします。
発症する人によっても、熱が無い場合や目だけに症状が出る場合もあり、
症状に合わせた対処が必要となるため、安易に市販薬で治そうとせず、医療機関を受診して症状に合った薬を処方してもらうようにしましょう。
予防するうえでの基本のポイントを押さえ、徹底的に対策をすることで感染を未然に防げるといわれています。
手洗いやうがいなどの基本的なことから始めて、しっかりと予防しましょう。
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