暑さに強い人、弱い人という表現がよく使われますね。
同じ状況下にいても
- ダラダラの汗を流しながら「暑い~!」と言ってクーラーをすぐつけたがる人
- 汗もかかずに涼しい顔をしている人
この違いは一体何なのでしょうか。
実は《汗のかき方》こそが、熱中症になりにくい人なりやすい人の違いのようです。
今回は、2016年7月に放送された「世界一受けたい授業」でも取り上げられた
「熱中症の新常識!暑さに打ち勝つ身体を作る方法」より
信州大学学術院医学系教授(疾患予防医科学系専攻・スポーツ医科学講座)の能勢博(のせひろし)先生の講義から抜粋してお伝えしたいと思います。
もともとの体質だから…と諦めないで!夏に強くなる体質改善法があるようですよ(^^♪
もくじ
熱中症になりやすい人とは?
熱中症は、暑い環境のなかで発生するカラダのあらゆる不調の総称のこと。
私たちの体にはもともと「体温調節機能」が備わっていて、暑いときには汗をかいて体表面から熱を逃がし、上がった体温を冷やそうとするはたらきがあります。
熱中症になりやすい人は、この汗をかくという調節機能が上手くいかないことであらゆる不調につながります。
牛乳が熱中症に強い体をつくれる理由
能勢先生が提唱する、熱中症に負けない体を作るための飲み物は
- 牛乳
です。しかしただ単に牛乳を飲むだけというわけではありません。
「熱中症に強い体を作るために必要なキーワード」は3つあります。
① 暑熱順化(しょねつじゅんか)
② 血液を増やす
③ 下半身の筋肉量を増やす
の3つです。
キーワード①暑熱順化
暑熱順化(しょねつじゅんか)とは
《暑さに対して体を適応させる力をつける》
という意味です。
同じ環境でも暑いと感じる人、感じない人の違い
よく夏のオフィスで同じ環境下でも、大汗をかいている人と、汗も出ずに涼しい顔をしている人がいます。
これは、体が「暑熱順化」できているかの差が大きく影響しています。
暑熱順化されている人
例として、わずか0.1℃の体温上昇でも、体が反応して汗をかけます。
その汗は素早く体熱を放散させることが出来るので、それ以上体温は上昇せず涼しいまま、暑い中でも楽に過ごせるようになります。
暑熱順化されていない人
例として、0.5℃の体温上昇してやっと汗をかき始めます。
つまりかなり体温が上がってからやっと「暑い!」と感じて汗をかきます。
暑さに弱い人は体が「暑い」と反応するまで時間がかかり、かつ常に高い発熱が継続するので体も非常につらい状態です。
暑熱順化できると何がいいのか
暑熱馴化されている体は、体温の上昇がわずかであっても、皮膚の血管が拡張して身体から放熱できるようになります。
すなわち、暑熱馴化するということは、自動車でいうラジエーター(放熱器)を大型化することと同じ意味を持つのです。
そして暑熱順化は、後述のように“ややきつい”と感じる程度の運動をすることで効率的に体を改善することができます。
キーワード②血流量を増やす
運動によって暑熱順化し、体温調節機能を高めるうえで必要なのが血液の量を増やすことです。
と言われています。50キログラムの体重の人は、約3-4㎏の血液量ですね。
血液量が多いというメリット
血液量が多くなると、多くの血液が心臓に戻ってくるということですから、心臓は多くの血液を皮膚に流すことができます。
皮膚に多くの血液が流れれば、当然、汗を作る汗腺にも、汗の原料となる水分、イオン(電解質)が行き渡り、汗をよくかけるというメカニズムです。
キーワード③下半身の筋肉量を増やす
血液を増やすことの大切さは先ほどすでにご説明しましたが、もう一つ大切なことは
心臓より下にある、足から心臓に血液を戻す筋肉ポンプの働きを強くすること。
下半身を中心とした筋肉を発達させることで、血管に圧力を加えやすくなり、心臓に血液を戻しやすくします。
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「インターバル速歩」と「牛乳」のコンビが最強
能勢先生が、これら①②③の条件をクリア出来る方法として勧めているのが
- インターバル速歩
+
- 牛乳
の2つの組み合わせです。
インターバル速歩とは
インターバル速歩は
- サッサカ歩き(早歩き)
- ゆっくり歩き
を交互に3分ずつ行うウォーキングです。
ポイントは、サッサカ歩きはややきついと感じる速さで大股で歩くこと。
※気温が高い時に外に出て熱中症になってしまうと本末転倒ですので、涼しい朝夕の時間などがおすすめです。
より詳しい情報の紹介サイトはこちら
運動直後に牛乳を飲む
インターバル速歩をしたら、一時間以内に牛乳(コップ1杯程度)を飲みます。
運動後は筋肉の回復のために、肝臓で
というタンパク質が作られます。
このアルブミンこそ、牛乳に含まれるタンパク質の材料となるのです。
肝臓で作られたアルブミンが血液内に放出されることで、結果的に血液量が増えるメカニズムです。
牛乳の苦手な人はヨーグルト、チーズなどの乳製品でも効果があります。
子供の場合の体質改善
子どもは汗腺が未発達で、その機能性は大人に比べて3分の2程度といわれています。
そのため高温に弱く、より熱中症になりやすいリスクを背負っています。
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肩で息をするような運動の後に牛乳が効果的
子どもの場合も、テニスやバスケットボール、サッカーなどのスポーツで、
肩で息をするような運動を1日15分~30分くらいして、直後に牛乳を飲むことで
大人と同じように血液量が増え、暑さに強い体づくりが期待できます。

引用元:牛乳による熱中症対策の有効性 Jミルク 監修:能勢博教授
高齢者の場合の体質改善
熱中症による死亡者数は、特に75歳以上90歳未満の方が一番多いのが現状です。
なぜかというと、
- 汗のかきやすさ
- 皮膚血管の開きやすさ
など、暑さを感じる皮膚の感度が、健康な人であっても年齢とともに衰えてしまうからです。
高齢者は暑さに対して鈍感になってしまう
つまり、室内であっても、熱中症の危険が迫っているのにもかかわらず、「暑い」と感じることが出来にくくなってしまうのです。
体感に頼らず、室温計を参考にして、高温であればクーラーのスイッチを入れたり、水分をこまめに補給するなどの対策が必要です。
こうした年齢層の方の場合も、インターバル速歩の直後に牛乳を飲むことが有効となります。
ポイントは若い人のように速く歩こうと考えず、本人なりのややきついと感じる速さで歩くことです。
マイペースで1カ月も続ければ、かなり汗をかきやすい体になることが期待できるでしょう。
まとめ
運動後に牛乳を飲むことの有効性は、環境省もお墨付きの結果です。
夏になると必ずニュースで「熱中症に注意!」と毎日のように言われ、ついつい外に出るのがおっくうになりがちですが、
適度な運動の後に牛乳を飲むことで、必ず暑さに強い体になれます。
コツコツと積み重ねて、夏でも過ごしやすい体づくりを始めてみませんか?