最近小さなお子さん(とくに乳児・赤ちゃん)が食塩中毒で命を落としてしまうというような痛ましい出来事が多くニュースで聞かれます。
塩とは科学的には「塩化ナトリウム(NaCl)」と言って、
- タンパク質
- 炭水化物(糖質)
- 脂質
- ビタミン
- ミネラル
の人間が生きていくためには絶対必要な「五大栄養素」といわれる「ミネラル」に分類されます。
ミネラルは、塩を含むカルシウム・鉄など人間に必要なものを「必須ミネラル」といい、全部で16種類あります。
この「必須ミネラル16種類」の中でも、塩は人間の生命維持にいちばん大切な栄養素です。
しかし、どんな栄養素にも言えることですが「摂りすぎは危険」ということを再度認識された方も多いのではないでしょうか。
今回は
- 食塩中毒の症状や原因
- 食塩の適量摂取量
などについて紹介したいと思います。
もくじ
食塩中毒の症状と原因は
食塩中毒で亡くなってしまったお子さんの多くは
- 嘔吐(ものを吐く)
- 下痢
- 発作
- 硬直
- 痙攣(けいれん)
- 昏睡(こんすい)
などの症状が見られ、そしてもっとも多かったのが
- のどの渇き
だったそうです。
これらの症状は、いちどに大量の食塩をとったことで、体内でナトリウムの濃度が過剰に上がる「高ナトリウム血症」と言われる典型的な症状です。
からだの水分とは
「水分補給は大切!」とよく言わるとおり、人間の体の約60%以上は水分で出来ています。

引用:環境省・熱中症環境保健マニュアル2014
体の水分のはたらきは、主に
- 体温調節(熱の運搬、蒸発による放熱)
- 栄養素や老廃物をスムーズに運ぶ
- 体内環境を維持する(体液の濃度、浸透圧の調整)
があり、生命の維持には必要不可欠です。
このような水の働きをサポートするのが、「塩」などに代表される電解質(イオン)の役割で、体にとって重要な役割を果たしています。
その血中の塩分の調節が出来なかったことでこのような症状を引き起こしてしまうのです。
体の塩分濃度の大切さについてはこちらの記事を是非参考にしてみてくださいね。
食塩中毒が子供に起こりやすい理由
小さなお子さん(乳児・赤ちゃん)は
- 体内の過剰な物質を排出する腎臓の機能が成熟していない
- 過剰な塩分により喉(のど)が渇いても、自力では水を飲めない
ということもあり大人(成人)に比べるとその分食塩中毒リスクが高くなります。
大人の食塩致死量は
食塩中毒はもちろん大人であっても起こり得る可能性があります。
もちろん個人差はありますが、一般的に
・食塩の致死量は、体重1kgあたり0.5~5g
・体重60kgでは、30~300gの食塩摂取で死亡
と言われています。
塩の摂りすぎに注意
子供が食塩中毒になりやすいなら塩は全く与えてはいけないのか?と思われたかもしれません。
しかし今回の報道を見てみると、その多くは乳児で5g~10g程度の食塩(小さじ1~2杯分)を無理矢理与えていたとのこと。
残念なことに、明らかに大人による無知で意図的な悪意ある行為でした。
小さじ1~2杯とはとても少ないように聞こえますが、実際にはかなり多量です。
「塩分の摂りすぎは注意、減塩生活を」とよく言われますが、実際の適量摂取量はどれくらいなのでしょうか。
食塩の一日の適量摂取量
厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」(2010年版)を見てみましょう。
【ナトリウムの食事摂取基準(食塩相当量[g/日])】
年齢 | 男性 | 女性 |
0~5(月) | 0.3g | 0.3g |
6~11(月) | 1.5g | 1.5g |
1~2(歳) | 3.0g未満 | 3.5g未満 |
3~5(歳) | 4.0g未満 | 4.5g未満 |
6~7(歳) | 5.0g未満 | 5.5g未満 |
8~9(歳) | 5.5g未満 | 6.0g未満 |
10~11(歳) | 6.5g未満 | 7.0g未満 |
12~70以上(歳)の成人 | 8.0g未満 | 7.0g未満 |
※ただし、高血圧で治療している人は、一日6g未満にすることがすすめられています
実際日本人の食塩摂取量はまだまだ高い傾向があり、21年度国民健康栄養調査の結果によると、70%の人が目標値より多く食塩を摂取しています。
食塩の取りすぎは、高血圧などの生活習慣病に深く関わってきますので注意が必要です。
調味料の塩分量
料理などでよく使う調味料の塩分量は実際どのくらいなのでしょうか。
- 小さじ1杯 : 5cc(5ml)
- 大さじ1杯 : 15cc(15ml)
ですが、同じ[小さじ1][大さじ1]でも塩分量はこれだけ違います。
調味料に含まれる塩分量(g) | ||
食品 | 小さじ1 | 大さじ1 |
食塩 | 6.0 | 18.0 |
濃口醤油 | 0.9 | 2.6 |
薄口醤油 | 1.0 | 2.9 |
減塩醤油 | 0.5 | 1.4 |
米みそ | 0.7 | 2.8 |
減塩みそ | 0.4 | 1.0 |
麺つゆ(3倍濃縮) | 0.5 | 1.6 |
ポン酢しょうゆ | 0.5 | 1.5 |
ウスターソース | 0.5 | 1.5 |
ケチャップ | 0.2 | 0.5 |
中華だし | 1.8 | |
チキンコンソメ | 1個=2.3 | |
マヨネーズ | 0.1 | 0.3 |
とくに醤油は、濃口よりも薄口のほうが塩分が多いことが特徴です。
塩の摂りすぎをリセット!一緒にとりたい栄養素
気を付けていても、やはり塩分の多いものは美味しくて食べ過ぎになりがちですよね。
そんな時の強い味方の栄養素が、塩と同じくミネラルの仲間「カリウム」です。
カリウムは体のむくみを解消し、水分と一緒に不要な塩分を体から排出してくれる作用があります。
カリウムが多い食品としては
- 納豆
- 野菜(トマト・キュウリ・スイカなど)
- ワカメ
- イモ類
- 干し柿
- リンゴやバナナ
など、大豆製品や海藻類、夏野菜、くだものに特に多く含まれていますので、副菜をたっぷり、果物も毎日忘れずとりましょう。
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まとめ
食塩中毒は体の塩分濃度のバランスが崩れることによって起こります。
もちろん大人であっても摂取量には気を付けなければいけません。
- 具だくさんのお味噌汁にして野菜本来の香りを楽しむ
- 香味野菜加える(セロリ・パセリ・ねぎ・しそ・にんにく・しょうがなど)
- 塩のかわりに、お酢や柑橘類(カボス、レモンなど)を代用する
- 香り高い出汁を工夫する
などさまざまな天然の風味を加えることで、塩分控えめでもお腹も心も満足できる美味しい食事を作ることができます。
厚生労働省が推奨する「食塩の適量摂取量」と比べると、日本人は適量の2倍以上の塩を摂っているという実態も明らかになっています。
食材選びや調理法も工夫して、少しずつ薄味に慣れていき、素材のそのものの味を生かした料理を楽しみましょう。
※最後までお読みいただきありがとうございました。こちらの記事も関連性が高いですので、ぜひ参考にしてくださいね↓