「食中毒」と言っても原因は
- 菌
- ウイルス
- 寄生虫
などさまざまありますね。
最近では、マグロ・サケ・ヒラメなどのお刺身を食べることで
- アニサキス
- クドア
などの「寄生虫」が原因で食中毒になるケースが毎年報告されています。
先日、メキシコにおいて寄生虫の種類の一つ
「吸虫(きゅうちゅう)」
が「目に侵入し失明してしまった」という17歳の少年のニュースをみて大変ショックを受けてしまいました。
しかしこれは遠い国の話ではなく、私たちの身の回りに多く生息しています。
そこで今回は、失明の原因となってしまった「吸虫」とは何なのか?
- 寄生虫の種類や分類
- 失明を引き起こした吸虫とは
などを調べてみました。
※目の中をウヨウヨ動く実際の吸虫の動画は恐ろしいので閲覧にご注意ください
寄生虫とは?
食中毒原因の一つ「寄生虫」と一言でいってもその種類はさまざま。
寄生虫とは、人や動物の表面や体内にとりついて(寄生して)、そこから栄養を吸い取いとりながら生きる生物の総称です。
そして寄生される人や動物を
「宿主(しゅくしゅ・やどぬし)」
といい、寄生虫は基本的に宿主なしでは生きていけません。
寄生虫は宿主に害を及ぼす場合があり、この感染症を総称して
「寄生虫症」
といいます。
寄生虫症の報告例は
日本においては、第2次世界大戦直後、不衛生な環境もあり多くの人々が寄生虫に感染しました。
患者の6割は、後ほどお話しする表中の「線虫(センチュウ)類」という種類が原因だったと言われています。
近年の寄生虫症
戦後は、農業などの化学肥料の導入、衛生的な生活の普及、検査などの対策によって、だんだんと寄生虫症患者は少なくなっていきました。
ところが最近は
- 食文化が豊かになり輸入食品の増加
- 自然志向の食べ物が良いとされる流れ
- 海外旅行の増加
- ペットブーム(犬・猫・魚類など)
などさまざまな要因が重なると事で、再び寄生虫症が増えてきているといわれています。
寄生虫の種類・分類は
人につく寄生虫は、
- 世界では約200種
- 日本では約100種
ほどもいると言われていて、大きく分類すると
① 原虫類…アメーバなど
② 蠕虫(ぜんちゅう)類…アニサキスなど
③ 衛生動物類…ノミ・ダニなど
の3つに分けられます。

引用:大鵬薬品-寄生虫の分類より一部抜粋-
以下に紹介する虫はごく一部ですが、身近な寄生虫はこのように分類されています。
① 原虫類
1つの細胞(単細胞)からできているため、顕微鏡でないと見ることができません。
原虫 | 分類 | 特徴 | 具体的な名前 |
---|---|---|---|
根足虫類 | 形を自由に変えて動くアメーバ | 赤痢アメーバ、多食アメーバ | |
鞭毛虫類 | 運動するための長い毛 (鞭毛)がある | トリパノソーマ、ランブル鞭毛虫、膣トリコモナス | |
胞子虫類 | 運動機能は無し。分裂により胞子を形成する | マラリア、クリプトスポリジウム、肉胞子虫、トキソプラズマ | |
有毛虫類 | 細かい毛(繊毛)がある | 大腸バランチジウム、ヒトブラストシスチス |
※大鵬薬品-寄生虫の分類より一部抜粋-

引用:国立感染研究所-顕微鏡下での赤痢アメーバの運動-
② 蠕虫(ぜんちゅう)類
蠕虫は多くの細胞(多細胞)からできていて、人の眼で見ることができる寄生虫です。
蠕虫 | 分類 | 特徴 | 具体的な名前 |
---|---|---|---|
線虫類 | 線状、円柱状で細長 | 回虫類( 回虫(ヒト回虫)、ブタ回虫、イヌ回虫、ネコ回虫、アニサキス) | |
旋尾線虫類( 日本顎口虫、東洋眼虫、旋尾線虫、バンクロフト糸状虫、イヌ糸状虫) | |||
吸虫類 | 体が扁平で、2つの吸盤をもつ | プラギオルキス(肝吸虫、横川吸虫、ウェステルマン肺吸虫、宮崎肺吸虫) | |
条虫類 | 体が扁平で長く、種類によって3個から数千個の節にわかれている一般にはサナダ虫といわれる | 擬葉目(日本海裂頭条虫、広節裂頭条虫) 円葉目(無鉤条虫、有鉤条虫) |
|
その他 | 鉤頭虫類、鉄線虫類 |
※大鵬薬品-寄生虫の分類より一部抜粋-

引用:国立感染研究所-旋尾線虫-

引用:厚生労働省-アニサキス-
③ 衛生動物類
その他に体の皮膚に寄生したり感染を媒介するノミ、シラミ、ダニなどの動物(衛生動物)も寄生虫に含まれます。
衛生動物 | 特徴 | 具体的な名前 | |
---|---|---|---|
人の体表に寄生、感染を媒介、毒物によって危害を及ぼす | カニ、ダニ、蚊、ノミ、シラミ、ブユ、ハエ |
※大鵬薬品-寄生虫の分類より一部抜粋-
寄生虫の感染経路
病原体となる寄生虫によって、感染経路や感染部位もさまざまです。
経口(けいこう)感染
最も多いのは口から感染する経口感染です。
- 生の魚介類
- 肉類
- 生野菜
- 飲料水
などを体に直接口から入れることで感染します。
また、ペットや野生動物に寄生している寄生虫から、人が感染することもあります。
刺咬(しこう)感染
昆虫に刺されて感染する刺咬感染は、蚊、ハエ、ノミ、ダニなどが媒介します。
日常的には「虫刺され」と言われます。
虫に刺されたり咬まれた時に出来る傷や外傷のことで、刺咬症(しこうしょう)、
蜂の場合は蜂刺症(はちししょう)とも言われます。
その他
皮膚から直接感染する経皮(けいひ)感染は、川や湖などを裸足で歩くことで、皮膚から直接幼虫が侵入してくる場合です。
性行為によって感染する赤痢アメーバ・ケジラミなどもあります。ケジラミは、入浴や毛布やタオルなどを介して、間接的に感染することもあります。
吸虫がなぜ目に感染?
今回失明をしてしまった少年は、先ほどお話しした図の「吸虫」という種類の寄生虫が、右目の中に直接侵入していました。
吸虫は、一般的には淡水中に生存する魚介類を直接食べることで寄生され、
寄生部位も
- 肺
- 腸
- 肝臓
などの内臓が一般的と今までされていたにも関わらず、検査の結果少年の体内から吸虫や卵は出てこなかったとのことです。
医師も原因がわからず
記事によると、「寄生虫が目に達した」という症例については、
人の小腸に寄生する「回虫」が目に達した症例はわずかにありますが、
「吸虫」が眼球に寄生した例は世界で初めて確認されたとのこと。
恐ろしいことに、未だ
「吸虫どうやって眼球に入り込んだのかは不明」
として、原因解明が急がれているとのことです。
▼眼球の中を3ミリほどの虫がウヨウヨ動き回ってます
(2017年9月21日・医学誌「New England Journal of Medicine」より発表)
改善策は
今回の症例によって
「吸虫は魚類や水だけでなく、陸上生物に寄生している可能性も高い」
という見方が考えられています。
ですから
「不必要に野外で野生動物などには触れないように」
と米国の眼科医は呼び掛けているとのこと。
失明してしまった少年には心が痛みますが、早く感染経路を特定されることを願うばかりです。
まとめ
体は小さくて見えなくても、時には人間の命までも脅かす可能性のある寄生虫たち。
私は今まで「サナダ虫」というと、戦後の不衛生さがもたらした寄生虫…というイメージがありましたが、
最近は「アニサキス」などのお刺身の寄生虫問題で、
「新鮮なお刺身であっても寄生虫リスクは高い」
ということを再認識しました。
自分や周りの人の身を守るためにも、予防対策の意識を高めて安全に過ごしたいものですね。
https://kenkokampo.com/lifestyle/meal/meat_food_poisoning/9521/