「眩暈(めまい)」は、予期せぬ時にフッと襲ってくる厄介な体の症状。
頭痛や腹痛などと同じように、誰しも一度は体験するものではないでしょうか。
- 周りがグルグル回っているような感じ
- フワフワした感じでまっすぐ歩けない
など、表現も人それぞれです。
起こるタイミングも
- 食後(特に食べ過ぎた後)
- お腹が空きすぎたとき
- 寝起きに起き上がる瞬間
- お風呂で湯船から出ようとしたとき
など状況もさまざま。
“めまい“
だけでなく、
“頭痛・吐き気・耳鳴りを伴うめまい“
もあり、症状は十人十色です。
今回は、
を中心に考えられる症状をご紹介します。
めまいとは
めまいという現象は、
からだのバランスを保つ機能に何らかの障害が起こること
といえます。
めまいを訴える人数は、厚生省の国民生活基礎調査によると、
約240万人にものぼるとされ、“5人に1人は悩む国民病“とも言われています。
真性めまいと仮性めまい
めまいを引き起こす病気や症状は沢山ありますが、性質によって大きく2つに分かれます。
【真性(しんせい)めまい】
原因が、からだの平衡(バランス感覚)をつかさどっている
「耳」や「脳」に関係する神経・伝達機能
に、何らかの異常や特定の疾患がある場合のめまい
【仮性(かせい)めまい】
原因が、耳や脳の平衡感覚の異常ではなく、
「脳」を流れる血流量(酸素量)
が主な原因のめまい。
血圧・自律神経・ストレス・全身の病気・加齢による機能の衰えなどが関係しているため、
原因を突き止めることが困難な場合が多いめまいです
めまい症状表現は主に4種類
めまい症状の表現・訴え方も人によってさまざま。大きく分けて4種類あります。
①回転性のめまい
自分や周りがグルグル回っている感じの“回転性めまい“
しばしば
- 目が回る
- まっすぐ歩けない
- 天井がグルグル回る
- 自分のまわりの景色が回っている
などと表現されるめまいで
“グルグルめまい“
といえます。
内耳(=ないじ・耳の中にある神経部分)や、脳の中心部・小脳に異常が原因で真性めまいが主な原因です。
②浮動性・動揺性のめまい
“非回転性めまい“ともいわれ、身体がユラユラ揺れているような感じのめまいは、車酔いにも似て、とても気分の悪いもの。
- 体がフワフワした感じ
- 雲の上を歩いているような感覚
などと表現されるめまいで
“フワフワめまい“
といえます。
主に、両側の内耳や脳の神経障害によって起きる真性めまいであることが多いですが、
高血圧・低血圧、ストレスなどの仮性めまいが原因もあります。
③平衡失調(平衡障害)のめまい
- 歩行中に身体が左右に揺れる
- バランスがとりにく、くつまづく
- 転倒しやすくなる
などは、平衡感覚に異常が生じている真性めまいである可能性が高くなります。
④失神性発作のめまい
立ち上がるとクラッとし、時に目の前が暗くなるいわゆる「立ちくらみ」。
- 目の前が急に真っ暗になった
- 谷底に引きずり込まれるように感じた
- 頭からスーツと血の気が引いていくような感覚
などと表現されるめまいで
“立ちくらみめまい“・“失神めまい”
といえます。
耳や脳の異常(真性めまい)よりも、仮性めまいの場合に多く生じます。
脳に送られる血液の量が一時的に不足(酸欠状態)することで起こりやすく、
- 貧血・ストレス、過労・低血圧・自律神経の乱れ
- 首の骨や筋肉の異常(=頸性めまい)
などで症状が出やすくなります。
食後のめまい[食後低血圧]とは
食べた後に席を立とうとして、めまいを起こす場合で多いのが
という症状の可能性が多く、
『食事性低血圧』
ともいわれます。
食後低血圧の症状
食後低血圧は、名前の通り
食事後に急激に血圧が下がる症状
で、症状は
- めまい
- ふらつき
などの“フワフワめまい“に加えて
- 食後の体のだるさ
- 気分が悪くなる
- 吐き気(嘔吐)
- 胃もたれ
- 眠くなる
などにもなります。
ひどい時には、
- 強い立ちくらみを起こし、そのまま気を失ってしまう
という“失神めまい”になってしまう場合もあり、非常に怖い症状です。
二次的なケガや病気も引き起こしやすい
食後低血圧は、そのまま気を失ってしまうことで、転倒して、骨折などの大ケガに繋がることもあります。
それだけでなく、食後低血圧が脳卒中や心筋梗塞のひきがねになる可能性もあるため、早めの対応が大切です。
食後低血圧が起こりやすい時間
食べた後に血圧の低下が起こりやすいタイミングは、
食後30分~1時間程度
が一般的とされています。
個人差はありますが、一度血圧が下がっても、その後しばらくすると通常の血圧に戻るので、
めまいやふらつきが「食後低血圧」だと気がつかない方も少なくありません。
ある調査では、
“65歳以上の3人に1人程度は食後低血圧の疑いがある“
と推定されていますが、年齢に限らず誰しも起こり得る症状なのです。
どうして「食後」に「低血圧」になる?
食事をした後にどうして低血圧になってしまうのでしょうか。
私たちのカラダは、食事をすると胃や腸などの消化管がすぐに、
食べ物の消化・吸収活動を開始します。
そのため、大量の血液が胃腸に集められ血管を活性化、結果的に心臓の血液量が減ります。
健康な状態の人なら、急激な血圧低下は危険なので、全身の血液量を補うために
- 心拍を速める
- 血管を収縮させる
などの方法で、全身の血圧を維持する機能が備わっています。
しかし食後低血圧の人は、体内の代謝をコントロールする自律神経などに何らかの問題があるため、そのセーフティ機能が上手く働きません。
結果的に、食後の血圧を維持することが出来ず、急激な血圧低下が起こりやすくなってしまうのです。
食後低血圧は高血圧の人には起こらない?
食後低血圧はもともと「高血圧」の人こそ注意してほしい症状です。
高血圧の人は、
治療のための降圧薬が、逆に効きすぎて急激に血圧が下がる
ことで、目の前がクラクラするめまいが起きやすいからです。
食後低血圧は若い人にはおこらない?
一般的に食後低血圧は、自律神経機能が低下しやすい高齢者に多いとされています。
しかし、自律神経系を制御している脳の中枢に異常が出る病気、例えば
- パーキンソン病
- 糖尿病にともなう神経障害
- 多系統萎縮症(シャイ-ドレーガー症候群)
などの持病のある人にも合併例に多く見られます。
食後低血圧のセルフチェック
食後低血圧かどうかは、
“食前・食後の安静時の血圧の差“
を自宅でチェックして確認することができます。
食後は血圧がもっとも低下しやすいとされる食後1時間頃を目安として、
食事から2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下、
または食前に収縮期血圧100mmHg以上から食後90mmHg以下に低下
のいずれかの場合を食後低血圧と定義する
とされています。つまり、
食後の収縮期血圧(最高血圧)が、食前よりも20mmHg以上低下する場合は、食後低血圧の可能性が高いといえます。
ただし、この数値はあくまでも目安ですので、自己判断せずに早めに医師に相談が大切です。
測定した数日間の血圧値のメモを医師にみせると、診断の参考になります。
どんな治療をする?
食後低血圧と診断されると
- 食事内容を中心とした生活指導
- 血流をコントロールする薬の服用
などを中心とした治療が行われますが、他の疾患(糖尿病やパーキンソン病など)が原因と考えられる場合もあり、人によって治療法は異なります。
食後のお酒・タバコでめまい
食後のめまい原因は「食後低血圧」だけではありません。
あなたが、食事のたびにアルコールやタバコも楽しむ、その時は気分が良くても、直後に“フワフワ・グルグルめまい“があるようでしたら要注意、
摂取量を控える必要があります。
めまいとお酒の関係
アルコールを飲み過ぎてしまうと、
脳や耳の奥にある内耳の三半規管
に一時的に障害を与えることになります。
平衡感覚をつかさどる機能が低下するため、めまいを誘発してしまいます。
めまいとタバコの関係
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる働きがあります。
つまり血液が酸欠状態になります。
脳や内耳の血行を悪くして酸素不足になると、めまいが起きやすくなります。
食べ過ぎてめまいは貧血?
「貧血」は、
“めまい“という症状が、
「低血圧」・「立ちくらみ」
と似ているため混同されやすいですが実は全く違うものです。
貧血の主な原因
貧血は全身の血液が薄まることで引き起ります。
最も多いのは
“鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)“
といって栄養(特に鉄分)不足が原因です。
ほかにも、代表的なものとして
“溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)“
があり、血液中の赤血球やヘモグロビンの減少(溶血)しまうもので
“サラサラすぎる血液の貧血“
とも言われ、
にんにくの食べ過ぎなどによって引き起こすことが知られています。
https://kenkokampo.com/vege/3294/
貧血=立ちくらみではない?
急に立ち上がったときに目の前が真っ暗になって、立っていられなる状態は、低血圧の典型的な症状です。
この立ちくらみは「脳貧血」とも言われ、「貧血」とは別のものです。
脳の血流量を保つための調整機能が間に合わず血圧が低下、脳が瞬間的に酸欠状態になって起こります。
食べ過ぎた後のめまい・他の原因
食べた後に起きやすいめまい原因は他にもいくつかあります。
食物(フード)アレルギーでめまい
食物アレルギーの人は、原因の対象食物を食べると
皮膚・粘膜・消化器・呼吸器
など広範囲にわたって、少量でも体のさまざまな場所にアレルギー反応が起こります。
大人になってから急に発症する事例も少なくありません。
【即時型の食物アレルギー】
食べてすぐ症状があらわれます。
症状…皮膚のかゆみや口の中のイガイガ、くしゃみや鼻水、腹痛や下痢など
【遅延型(遅発型)の食物アレルギー】
数時間~数週間後に症状があらわれます。
症状…頭痛やめまい、全身のだるさ、肌荒れ、情緒不安定など
乗り物酔いでめまい
食後に車や電車で帰宅。特に車は、
上下左右の揺れ・カーブ・速度の変化を、耳の内耳(ないじ)という平衡バランスを保つ器官が脳に伝えています。
人によってはこれが異常な刺激と感じることで自律神経のバランスが崩れ、
- めまい
- 吐き気
- 冷や汗
- 頭痛
などが引き起こされます。
食中毒でめまい
食中毒の症状といえば
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
などイメージがありますが、
- めまい
- 寒気
- しびれ
なども起こり得る症状です。
食べてから症状が実際にあらわれる時間=潜伏期間もさまざま。
原因は魚介類・お肉だけでなく、野菜やキノコ類などさまざま考えられますが、
多くは加熱不足が引き金になりやすいため、食べたものを洗い出してみる必要があります。
まとめ
「めまい」といっても千差万別、いろいろな種類と原因があります。
基本は
『耳鼻咽喉科』
を受診ですが、
『めまい外来』
『平衡神経科』
『神経耳科』
などの、めまい専門の科もあります。
“一時的なめまいではなく、明らかに毎食後めまいが起こる“
ということであれば、まずは真性めまいを疑って、耳や脳の異常がないかどうか、特定の疾患は隠れていないかなどを見分ける必要があります。
“失神めまい“に発展すると、大ケガにもつながってしまうため、
自己判断せず、早めに医療機関に相談してくださいね。
https://kenkokampo.com/body/heart/6457/