川崎病が発見されて約50年。
原因不明な病気ですが、専門医として小児科医が診察できることもあり、
後遺症の一つである
『冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)』
などの合併症が起こる件数は年々減っていると言われています。
しかし今でも
年間約300~400人
もの人が、冠動脈に関わる何らかの合併症を引き起こし、
死に至ってしまう事例があるのも事実です。
- 後遺症になる確率や死亡例は
- 後遺症症状や気をつけたい点
など、川崎病の後遺症についてまとめました。
もくじ
川崎病の好発年齢
川崎病になると、発熱や皮膚・粘膜などに特徴的な症状があります。
川崎病は、生後半年~4歳以下の子どもに一番多く発症し、
中でも1歳前後の赤ちゃんがかかりやすい病気です。
アジア諸国を中心に世界でも多い病気の一つですが、とりわけ日本人に一番多く
年間1万5千人以上
の子どもが川崎病に発症していると報告されています。
兄弟間で発症することも多く、少子化と言われている現在も患者数は年々増えています。
川崎病の再発
例えば子供に多い病気の麻疹(はしか)などは、一度かかると
『抗体(そのウイルスを防ぐタンパク)』
ができるので、二度感染することはありません。
しかし、川崎病の場合は
かかった子の2~3%に再発がみられ、(10歳までに多い)
うつる病気では無いとされていますが、兄弟でかかる場合が1~2%あります。
川崎病の原因
原因は未だ不明とされていますが、ウイルスや細菌の感染を防ぐために、
全身の血管に炎症が起きるのではと考えられています。
川崎病は赤ちゃんの心筋梗塞
川崎病で一番怖いのは、適切な治療が遅れてしまうことで
「冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)」
といって、字の通り
『心臓を覆っている動脈の一部に瘤(コブ)が残る状態』
になると、
狭心症や心筋梗塞の発生リスクを一生背負っていくことになるからです。

引用:国立循環器病研究センター -川崎病-
心筋梗塞といえば、大人の生活習慣病の一つというイメージは大きいですが、
川崎病にかかってしまうと子供のうちに心筋梗塞になってしまうこともあるのです。
この『瘤(コブ)』をいかに残さずに治療をするかが最重要となり、
また万一『瘤(コブ)』が残ってしまったら、適切な治療・検査を継続しないと
数十年後といった長い期間を経て、大人になってからも突然症状が出ることもあります。
川崎病後遺症の巨大瘤が出来る確率
後遺症の心臓動脈にできるコブ・「冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)」は、残る大きさも人によってさまざま。
もちろん、そのコブの大きさが大きいほど、合併症の危険リスクは高くなります。
冠動脈に大きなこぶができる巨大瘤(冠動脈径8mm以上)をもつ患者が、
毎年約0.5%、200人に1人います。
川崎病による死亡率は、最近では約0.05%、2,000人に1人となっています。
国立循環器病研究センター -川崎病のはなし-
川崎病の後遺症の症状
川崎病の代表的な後遺症により、
・全身の血液の流れが滞る
・血管が狭くなる
の状態によって、
“関連性があるのではないかと言われている症状“
はどのようなものがあるのかについてまとめてみます。
冠動脈瘤による狭心症
冠動脈は、全身に心臓に酸素や栄養を運ぶ役割がある2〜3mm程度の動脈で、
心臓を覆うように走っています。

引用:国立循環器病研究センター -川崎病-
川崎病で一度炎症を起こしてしまった血管は、
・血管に瘤ができる
・血管の壁が厚くなる
などの理由で血管自体がが細くなってしまっています。
血液の流れが悪くなり、酸素や栄養が送られず、心臓の機能が低下してしまいます。
この状態を
『狭心症(きょうしんしょう)』
と言います。
- 胸の奥が痛む
- 胸がしめつけられる
- 胸が焼けつくような感じ
などがありますが、狭心症の症状は長くても15分ほどで消えてしまうことが多いとされています。
不整脈
不整脈は、脈が不整になること、つまり心拍数やリズムが一定でない状態をいいます。
私たちの心臓は1日に約10万回以上も収縮と拡張を繰り返しながら、
全身に血液を循環させていますが、このポンプ活動に欠かすことが出来ないのが冠動脈です。
そこにコブが出来てしまうことで、血管のスムーズな流れが滞ってしまい、不整脈の状態になりやすくなってしまうのです。
急性心筋梗塞
冠動脈瘤などにより血管が狭くなったところに血栓(血のかたまり)ができることで、
急性心筋梗塞に発展することがあります。
心筋梗塞は、血流が途絶えてしまうので、心臓の細胞の一部が壊死してしまう状態です。
狭心症と同じような胸部の痛みが15分以上続くほか、
- 呼吸困難
- 冷や汗
- 顔面蒼白
- 血圧の低下
- 脈拍の上昇
などが見られ、ひどい時には意識不明になり死にいたります。
15分以上胸の痛みが続く場合は、すぐに治療を受けるようにしましょう。
その他の症状(難聴・頭痛・胸痛・腹痛)
症例はまだ少ないといわれていますが、血管の病気以外にさまざまな不快症状が出る場合があります。
頭痛・胸痛・腹痛・首の痛み
などが続く場合は注意が必要です。
血管が狭くなったり詰まることで発症している前兆である可能性があるため、
症状が続く場合は、血管の状態を早めにチェックしてもらった方がよいでしょう。
なぜ頭痛がする?
川崎病の治療後、なぜ頭痛が起きるのでしょうか。
体中の血管は繋がっているため、脳を覆い保護している血管にも影響がでるからです。
それによって
- 髄膜炎
- 脳梗塞
- 脳出血
といった脳に合併症が起こる例も報告されています。
前兆としては、発熱の他に、激しい頭痛、首の痛みなどが特徴的です。
少しでも異変を感じるようであれば、迷わず医師に相談して、脳の血管検査を受けましょう。
難聴も稀にある
また、関連性ははっきりわかっていませんが、まれに川崎病が発症した人で
高熱が続いた時に難聴になってしまう例も報告されています。
運動の制限
川崎病の後遺症が残ってしまった方は、一生涯において、激しい運動を制限されることも多くあります。
心筋梗塞になるリスクが普通の人より高いということは、心臓に負担をかける動作は控えなければいけないからです。
制限の程度は、後遺症の状態によるため、どのような運動までなら良いのかなど指導をされることもあります。
不妊との関係は?
川崎病の後遺症が原因で不妊につながるということは、まだはっきり分かっていませんが、
解熱剤の市販薬で有名な、バファリンAやケロリンなどの主成分
「アスピリン」
という成分が影響しているという声もあるようです。
アスピリンは、
- 心筋梗塞の予防
- 血栓ができるのを予防
- 血小板の働きをおさえる
などの働きがあるので「抗血小板薬」と言われる種類の薬ですが、
川崎病の後遺症にはこれらを継続して服用することが必要だからです。
お医者さんの判断によりますが、妊娠中のアスピリン服用に関しては医師とよく相談が必要です。
川崎病の後遺症になる確率
川崎病の後遺症は、
かかったおよそ15~25%の子どもに「冠状動脈瘤」の合併症が残る
と言われています。
川崎病にかかった後、予後に影響するのは心筋梗塞の発症です。
冠動脈障害だけであれば、心臓のポンプ機能に影響はありませんが、
巨大瘤(が残ってしまった方)では、
発症後10年で約60%・15年で約70%
の患者さんに冠動脈に狭窄や閉塞が見つかっています。
血管が閉塞した3人のうち2人は無症状で冠動脈造影検査で閉塞がわかりました。(無症候性心筋梗塞という)
3人に1人に心筋梗塞の症状がみられ、うち約20%が亡くなっています。
国立循環器病研究センター -川崎病のはなし-
このように、冠動脈瘤に
巨大瘤(=冠動脈径8mm以上)
が残ってしまった方は、大人になっても合併症の発症リスクは非常に高いことがわかります。
退院後も長期的な経過観察がつづく
川崎病に一度かかってしまった方は、合併症である「冠動脈瘤」が発症していないかどうか確認するため、心臓のエコー検査を定期的に受診することは欠かせません。
一度瘤が出来てしまうと、アスピリン以外にもさまざまな強い血栓予防方法のための薬の服用が長期にわたり必要になります。
この薬は、鼻血などの出血を伴うリスクも上がるため、成人後であっても慎重な経過観察が必要になります。
川崎病の後遺症の予防
川崎病の後遺症の予防は、生活習慣病を予防することに直接つながります。
川崎病は基本的に
“血管の炎症によって引き起こされる病気“
と言えるので、血管が普通の人よりも
- 傷つきやすい
- 詰まりやすい
- 流れにくい
という状態になっています。
これは、生活習慣病の原因となる
- 血管が硬くなる動脈硬化
- メタボ体形の原因になる脂っこい食事・偏った栄養
- タバコやお酒の飲み過ぎ
などによって血管を汚し、体に負担をかけているのと同じ状態です。
生活習慣病の解消法として定期的な適度な運動はかかせませんが、
川崎病にかかってしまったかたは運動制限がある場合もあるため、
事前に良く主治医と相談しながら経過を見ていく必要があるのです。
まとめ
川崎病は、後遺症が発生する確率は高い病気で、一旦後遺症が残ってしまうと、
大人になっても長期的に向き合っていかなければいけない病気です。
ですから、治療においては
「心臓の瘤を絶対に残さない」
というのが最重要になります。
川崎病は原因不明とされていますが、治療法は確立していて、治療費も補助がでますので、
とにかく早期発見・適切な早期治療が大切です。
初期症状は風邪との違いしやすいため、発見が遅れることもあるので、
特に小さなお子さんの場合は、保護者の方がしっかりと判断する必要があります。
【主に参考にさせて頂いたサイト】
日本川崎病学会 (http://www.jskd.jp)
国立循環器病研究センター(http://www.ncvc.go.jp)
メディカルノート (https://medicalnote.jp)